開発と研究は違う仕事なんです
投稿日時:2017-08-25 11:22:07
研究職をしていると、たまに「それじゃあ、新製品を作ったりしているの?」と聞かれることがあります。でもこれは間違いなんです。新製品を作る工程は「開発」の仕事であって、「研究」とは似て非なるものです。
わかりやすく言えば「研究」は新しいものを発見することが仕事であって、「開発」はそれを実用化する仕事と言えばいいでしょうか?医薬品の例をとるとわかりやすいかもしれません。インフルエンザのウィルスを攻撃できる抗体や、ウィルスの感染を抑える成分を発見するのが研究の仕事。それを実際に使用できる品質と安全性、効能を兼ね備えた医薬品にするのが開発の仕事です。
企業の場合、研究から開発まで全て1つの部門として扱うことがありますが、基本的には全く別のものですね。研究職はあくまで研究が仕事ですから、研究のひとつのテーマに大してどんな可能性があるのか、可能性があるとされていた説に根拠があるか、などといったことを考えます。新しいものだけではなく、既存のものを否定することも含めて「発見」が仕事です。研究結果は論文や、学会で報告されます。
開発はあくまで製品化が目的であり絶対条件ですから、開発費を投じておいてやってみたけど不可能だとわかりました、では済みません。製品化できるまで試行錯誤を繰り返すことになります。その開発の試行錯誤を支えているのが、私たちの「研究」なのです。
研究の結果は必ずしも開発に繋がりません。研究結果がでていても、製品化に向かなかったという例はいくらでもあります。ただし、今皆さんの周りにあふれている多くのものが、「研究」を元に「開発」されたものだということを知っておいてくれたら、研究者としては本望ですね。